昼休みになって、みんなは学食を食べに行った。



私はなんとなく食欲もなかったから、学園長に特別許可をもらって、屋上に来た。




「……え?」



扉を開けた先には、人?が寝転がってる。え、ここって普段立ち入り禁止じゃないの?




「……あ、あの?」



「……」




恐る恐る近づいてみると、仰向けで寝転がった男の人。同じ制服を着てるから、生徒である事は間違いない……はず。




男性だけど、長い睫毛に高い鼻、薄い唇、白い肌。眠っているだけで絵になる。




見たこと、会ったことがある気がするのはきっと気のせい。




そのはずなのに、なぜか目を逸らせない。




「……何見てんの?」



「ほぇ?」




一瞬でバチッと開かれたその大きな漆黒の瞳に吸い寄せられた。




身動きが、できない……。




「……彩実?」



「っ……」




訝しげな顔で私を見るこの人は、私があまり顔を合わせたくなかった人。




なんで……なんで……。この姿でも、私だって気づくの?




「彩実……」



優しい声とは裏腹に、グッと強い力で引き寄せられた。



いつの間にか上体を起こしていた彼の胸に、頭を預けるようにもたれ掛かる。




彼の心音が、心地よく響く。



「……やっと会えた」



苦しそうに呟かれた声に、胸が張り裂けそうになった。



そうだよ……離れなきゃ。



私には、彼の隣に立つ資格なんて持ち合わせてないんだから。




「……離して、ください」



「やだ。絶対離さない」



今出る最大限の力で彼の胸を押し返そうとしても、より強い力で抱きしめられて、無意味。



「彩実。顔見せて」



「……」




見せちゃダメだと思って俯いてみるけど、抵抗虚しく。




頬に手を添えられれば、その手に導かれるがまま、顔を上げてしまった。




「……」



無言でメガネを取られる。反対の手で、ウィッグも。




「……本当の彩実だ」




普段クールでポーカーフェイスな彼の嬉しそうな顔と声。




あぁ……また惹かれてく。