ドンドンドン。

パパと話をしてちょうど帰ろうとした時、玄関のドアを叩く音。
誰だろうとドアを開けると、ガタイの良いおじさんが2人立っていた。

「こんにちは、お嬢ちゃん」
「こ、こんにちわ」

見るからにガラの悪そうなおじさんに、怯んだ。
着ているのは真っ黒なスーツ。決して安物ではないけれど、ビジネスマンって風貌にも見えない。
あきらかにその世界の人って感じで、出来ればお近づきにはなりたくない。

「真理愛、もういいから帰りなさい」
パパも私をこの場から遠ざけたいみたい。

「うん、じゃあ」
怖くなって部屋を飛び出し、逃げるように外廊下を駆けていると、

「オイ、やめろっ」
ドン。
バタンッ。
ガチャンッ。
パパの部屋から争う声や何かの割れる音がした。

さすがに気になって後ろを振り返った瞬間、
あっ。

ダン。ガタガタ。
「キャー」
ドッスン。
私は階段を転げ落ちてしまった。

もともと古いおんぼろアパート。その上廊下にはゴミや荷物が置かれていて、階段も狭く気を付けないと踏み外しそうで怖かった。いつもは気を付けて歩いていたのに、つい油断した。
とはいえ、階段の半分ほどを転がり落ちるなんてさすがに恥ずかしい。

「真理愛、大丈夫か?」

痛みと恥ずかしさで固まっていると、パパが走ってきた。