今日、私は離れて暮らしているパパのアパートに行った。
私が小学校に上がる前にママとは離婚していて一緒に暮らした記憶もないパパだけれど、時々2人で会っている。

昔からパパが私の携帯に連絡をくれて、ママがいない時間を見計らって会っていた。
その習慣は今でも変わらない。
ただ、今日は急に呼び出された。
パパの仕事でお金がいるようになったとかで、「悪いけれど少し貸してほしい」と言われてアパートへ向かった。

親が子供にお金を借りるなんて変な話だけれど、今までにも数回あったし、その後すぐに返してもらっていたから私は怪しむこともなくお金を用意した。
とはいえ、高校生の私が用意できるのはせいぜい20万円ほど。それでもバイト代を貯めたなけなしの貯金。

「パパ、体大丈夫なの？」

お金を渡し洗い物をしてゴミを片付けると出てくるのはお酒の空き瓶ばかりで、とてもまともな食生活をしているようには見えない。

「大丈夫だよ。今は少し仕事がうまくいっていないだけで、すぐに持ち直すからな。そうすれば体も元気になるさ」
「ならいいけれど」

ママとパパが結婚した当時、パパは自分で会社を経営していた。
何人もの人を使って手広くやっていたらしいけれど、私が生まれてすぐに経営がうまくいかなくなって会社は倒産してしまった。
当然大きな借金を抱えることになり、その返済のためにパパはママの実家に融資をお願いした。
ママの実家はお金持ちの家だったからお金の工面はしてくれたけれど、それにはママと別れることが条件だった。

「ママには黙っていてくれよな」
「うん、わかっているから」
言えばまた大騒ぎされるのは目に見えている。