受診をあきらめて病院を出たものの家に帰る気にもならず、私は近くのカフェにやってきた。
昼間は何度か入ったことのある店だけれど夜に来たのは初めてで、周りを見ても大人の人ばかり。私は少し緊張気味にジンジャーエールを注文した。

「はあぁー」
綺麗な琥珀の液体に口をつけながら、ついため息が出る。

普段から帰りが遅いことを叱られたことはない。
ママはどちらかと言うと放任主義だし、おじさんは連れ子の私に遠慮してやかましいことは言わない。ちゃんとどこへ行くのかさえ知らせておけば反対されることもない。
でもねえ・・・

「この顔の傷と足のケガはごまかせないよねえ」
1人で窓辺に面したカウンター席に座りながら、ガラスに映った自分の姿を見て独り言をつぶやく。

このまま帰れば「そのケガはどうしたの?」って聞かれるだろう。
もちろん誤魔化しては見るけれど、嘘はつきたくないし、きっとおじさんにはばれる気がする。
そのうちママがヒステリックに叫び出して、またおじさんを困らせることになる。これがいつもの悪循環。
困ったなあ。
いっそのこと本当のことを話してしまおうか?
でもなあ・・・