「真理愛は、今幸せなのか?」
「うっ」
やはり言葉に詰まる。

私もママも不幸ではないと思う。
おじさんは優しいし、ママも昔よりは私に関心を持ってくれるようになった。
太郎お兄ちゃんが大学進学のために家を出てからは3人暮らしになったけれど、近すぎず離れすぎず穏やかに暮らしている。
でも・・・
ここは自分の家ではない気がする。

「なあ真理愛」
「ん?」
「人は皆、1人で生まれてきて1人で死んでいくんだよ」
「うん」
わかっている。

「血が繋がっていても家族になれない人もいるし、血のつながりがなくても一緒に生きる人もいる。要は相手を思う気持ちだと、俺は思う」
「だから、敬さんのは冷蔵庫の食材にも勝手に返済された奨学金にも文句が言えないでいるのよね」
「ああ、そうだな。おじさんもおばさんも俺のために色々してくれているのが分かるからな」

敬さんはやっぱり大人だ。
私ならそうは思えないだろう。

「真理愛はもう少し子供でいればいいんだよ。そんなに急いで大人になる必要はない」
「敬さん」

私の気持ちを軽くしてくれる敬さんに、「ありがとう」と言いたいのに、言ったら泣きそうで言えなかった。