『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~

「レントゲンを撮ってないからはっきりしたことは言えないけれど、骨に異状はないと思う。今夜一晩様子を見て明日整形外科を受診することを勧める。当然薬を出してあげることもできないが」
それでいいかと目で訴える。

「ええ。ありがとうございます」

私が受診しないという以上、医師にとってはそれが精一杯なんだろう。
そう思ったから、素直にお礼を言った。

「すみません、杉原先生。お願いします」
ちょうど話し終えたところで、待合に出てきていた看護師から声がかかった。

「はい」
男性医師は「じゃあお大事に」と声をかけて診察室へと戻って行く。

私は問診を破り捨て、救急外来の出口へと向かった。


「救命科医師、杉原敬(すぎはらけい)
病院入り口に張り出された医師名から彼の名前を見つけた。

まだ若そうなのに、立派なお医者様に見える。
すごいな。
将来の夢も目的もなく暮らしている私には別世界のようだけれど、ちゃんと将来を見据えて生きている人たちもいるのね。
なんだか、自分が恥ずかしい。