『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~

「君は未成年だから、家族が迎えに来てくれないと帰れないよ」
「はあ?」
ポカンと口を開けてしまった。

確かに未成年だし高校生だけれど、治療費は自分で払うつもりでいる。
誰にも迷惑をかけるつもりは無い。
ケガだって自分の不注意で起きたもので、事件性は全くない。
それなのに親を呼ぶなんて・・・

「悪いけれど、それが病院の決まりなんだ」
本当に申し訳なさそうに、困った顔をした男性医師。

「じゃあいいです。受診はやめて、帰ります」

迷いはなかった。
そもそも、救急外来を受診しなければいけないほど悪い状態と思っていたわけではない。
念のために診てもらっておけば安心かなって思っただけで、私自身受診が必要だと思ったわけでもない。

「本当にいいの?」
「ええ」

男性医師は心配そうな表情をしたけれど、私ははっきりと答えた。

「じゃあ、一応足の状態だけ確認してもいい?」
「ぇ、ええ」

受付をしていない以上、コストは全く発生しない。
と言うことは、ただ働き。それがわかっていて、男性医師は私の足の状態を確認していく。
変な人だな。それが正直な感想。
それでも、悪い印象は持たなかった。