「さすがに、がっつきすぎかな。最近、ずっとしてる……辛くない? 嫌じゃない? 」
ベッドの上で脚の間で抱っこされて、本当にストラップを指に引っ掛けたところで心配になったのかな。
「だね。言うの遅い。……だめだー、俺。輝が可愛くて、先に手が出ちゃう」
じとっと見すぎたのか、するっと指が離れた。
彼の指の分、隙間が空いた気がして寂しくなる。
たった1分引っ張られたからって、紐が緩くなったりするわけないのに。
「嫌じゃないよ」
「でも怠い? ……ずっとしてるっていうか、ほぼ輝に会うたび抱いてる。輝が泊まるのが増えたから、回数増えたみたいだけど。実際は、輝を見たら抑えられないだけだね。ごめん……不安じゃなかった? 」
言われてみれば。
最近すごく……してるっていうか。
前も会えばしてたから、会うたびしてることに変わりはない。
「ん……」
「身体だけ」なんて思う余地もなかった。
それだけ好きを刻み込まれると、そこは疑うこともなかったけど。
「したくなかったら言ってね。怒ったりしないから……輝がしたい時にしよう? 」
「…………本気? 」
気持ちを尊重してくれるのを、疑ったわけじゃない。そんな声が出たのは、寧ろ。
「ほんき。俺はしたいよ。輝といて……一緒にいなくたって。俺が、輝を欲しくない時なんてない。だから、言い換えればさ」
(……私が)
「俺は、輝にならいつだってその気。輝に誘われて、断るなんてあり得ないから。恥ずかしがらないで。……いつでも」
――輝が求めてくれるなら、どんなことでもしてあげる。
「…………今、は? 」
恥ずかしがるなとか無理。
こういう時に嫌悪感がないのなら、恥ずかしさは失くなることなんてない。
「……もちろん、したいよ。ずーっと、すごく我慢してる。やめていい? 我慢、しなくてい? 」
ああ、好きだ。
こんなに触れてほしくなるなんて、他に理由があるはずない。
私、陽太くんのことが、すき。
「ありがと。優しいね、輝……でも、きつかったら言ってね」
優しさじゃない。
私が欲しがってるんだって、自覚させる陽太くんは意地悪で、それを優しいって言ってくれる彼はやさしい。
何だかんだ言っても、小さく頷くだけで許してくれるのも。
「何してるの」
大した意味はない。
ただ触れたいだけだってバレてるから「?」がつかず、語尾も上がらなかった。
少し緩んでしまった手で遊んでると、そっと顎が肩に乗った。
「陽太くんに、髪乾かしてもらうの好き」
長い指は、私の髪が絡んでいようが引っ掛かることなく、優しくするんと毛先まで滑ってく。
何かコツがあるのかな。
たったそれだけで、気持ちよくなっちゃうくらいの何か――……。
「よかった。コツ? ないよ、俺には。それも、ダメかもしれないけど。……ずっと、触れたかった。髪に触れるだけで、俺も気持ちいいからかな」
――俺が輝に誘われないこと、ないんだよ。
「それだけで発情するって、すごいよね」
今度は、ちゃんと笑ってくれた。
なのに、私の方が無言になって。
されるがままの陽太くんの手を、恐る恐る頬に当てた。
掌に包まれる安心感と。
頬の熱が伝わってしまう緊張感と。
少し堪えたのか、僅かに鳴った喉の音。
「陽太くんだけじゃないよ」
――私もしてる。
陽太くんといて、こうやって中途半端に脱げた服が辛くて辛くて堪らないくらい。
だから、急にやめないで。
突然、引いたりしないで。
「……して……」
この、正体不明のざわめきを止めて。



