意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!




そうっと、どこまで近づいていいのか確認するみたいに、ベッドに上がった陽太くんが近づいてくる。


(息が……)


今頃、なんでこんなに呼吸ができなくなるんだろう。
友達――単なる幼なじみではあり得ない触られ方をしたのに、今、こうしてふたり、同じベッドに座ってるだけで。


「輝……」


大人二人が座ると、歩み寄るほどの距離はない。
だから、陽太くんの顔がすぐそこに来るまで、数秒だったはずなのに。

――もどかしい、なんて。

私が引っ張ったのか、伸びた手を陽太くんが引き寄せてくれたのか。
ちょっとだけ荒く距離がゼロになって、照れた頬を味わうように包まれ、持ち上げられる。


「……ん……あき、ら……。苦しくない……? 」


くるしい。
這い、撫でる指の優しさとは対照的に、キスはどんどん深く、呼吸する間もなく口内を侵される。


「だい、じょ……」


そんなキスを続けながら、一生懸命理性にしがみつこうとする陽太くんはやさしい。
怖がらせないように触れて、確認して、名前を呼び続けるのは甘い。


「……嘘つき。ごめんね」


ぺろりと舌で繋がった糸を舐め切ったのはとてつもなくエロいのに、一度終わりを告げられたんじゃないかと不安になる。


「ね、バンザイして」


大丈夫だよ。
そんなんじゃないよ。

そう安心させるように頭のてっぺんから撫でられると、幼すぎて自分で脱げない子供みたいに、それが当たり前のことだと何も思わず両腕を上に。


「いいこ」


でも、その「いいこ」の声はセクシーすぎだ。
たったそれだけで首まで染まってしまうのが悔しくて、思わずふくれっ面になる。


「言ってみたかったんだもん。昔は、こんなこと絶対言えなかったから」

「そ、それは、だって……」


上半身を晒すのは二回目なのに、もうあの時の羞恥心を上回ってる。
どうやったら自然に隠せるものかと、何かを探したけど。


「輝が可愛くて、見上げて追いかけてばっかりだった。もちろん楽しかったし、嬉しかったけど……今は」

「……っあ……」


漏れた声はもちろん、わざとじゃないけど。
押し倒すなんて言えないくらいゆっくり――しかも、ベッドに直接、いきなり背中が当たらないように、陽太くんの腕がゆっくりマットに降ろしてくれたのに。
本当は、「あ……」なんて声、必要ないくらいわざとらしくて恥ずかしい。


「時々……じゃ、やっぱやだ。じゃなくて、こうやって輝を抱ける時は、見下ろしても許される……かな」


両頬の横、マットレスに押し当てられた掌は閉じ込めるというより、未だどうにかスペースを保ってくれてるみたい。

気遣いが嬉しい。
でも、ちょっと――結構切ない。


「……他の子に、そんな確認する……? 」


何度も何度も確認せず、そのまま結ばれたのかな。
それは愛情だからだと知ってるのに、このうえまだ我慢できてしまうのかなって心配になる。


「しなかったよ。どうでもいいもん。嫌われたって軽蔑されたって、別に。でも、輝にまた嫌われたら俺、死んじゃう……」

「もう、そんな心配しなくても……っん……」


ちょっと抗議するように、耳に意地悪される。
心外だ――こんなふうに、とろりと舐めたくせに。
優しくキスして離れていくだけなんて、意地悪されるようなことは言ってないのに。


「輝を失うのは、俺にとって恐怖でしかないんだよ。輝は、いっつもそうだー」


『……ずっと一緒って言ったのに、あきちゃん嘘つき……』

『……え、だって、幼稚園……』

『ずっと……行かないって言った……』


「好きって言って。好きって……輝も俺に触れてて」


『……う……それはその、言葉のあやって言うみたい』

『……分かんない』

『……ご、ごめんね』


こんなに不安なのに、簡単に言ってって非難されて、昔何度もしたやりとりを思い出す。


「……すき……行かない、から……」


『すきなの。あきちゃん、すき……あきちゃんも』


――好きって教えて。


「すき……ひな、っ……」


少し安心したって笑って。
私から触れるも何も、捕まってないとベッドにすら沈んでしまう。
耳奥と胸を攻められて、他にこの手をどうしたらいいの。