「そういえば美優、これ。頼まれてたやつ」


「あ、ありがとう」


「受験すんのは勝手だけど、うち結構偏差値高いからな?ちゃんと勉強しないと受からねぇよ?」


「わかってるよ。でもどうしてもここの陸上部に入りたいんだもん。大会出れなかったからもう推薦も無理だろうし。勉強頑張るしかないから」



龍之介くんから渡された冊子を、美優ちゃはパラパラと捲る。どうやら龍之介くんが通っている高校のパンフレットらしい。


部活動紹介のページなのだろうか、「いいよねぇ……」と食い入るように見つめる姿に思わず微笑む。


龍之介くんはそんな姿を呆れたように腕を組んで見つめていた。



「どうせ時間あるんだから入院してる間に少し勉強すればいいんじゃないか?明日教科書持ってきてやろうか」


「本当!?ありがとお兄ちゃん。ついでに勉強のお供にキャンディとチョコレートもお願い!」



キラキラした目を向けた美優ちゃんに、龍之介くんは「はぁ?」と眉間に皺を寄せた。



「……それは却下。参考書とワークとルーズリーフなら持ってきてやる」


「……ケチ」


「馬鹿かお前は。そんなんじゃ落ちるぞ。ちゃんと勉強しろ」


「はーい」



美優ちゃんは不貞腐れたような声を出したけれど、その後も楽しそうにしばらくパンフレットを見つめていて。