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「……あれ……?」


「奈々美!奈々美!?」


「……お、かあさん……?」


「奈々美!良かった……」



目を開けた時、一番に飛び込んできたのはお母さんの泣きそうな表情だった。



「先生呼ばなきゃ……!」



お母さんがそう言って慌てたように視界からいなくなり、何度か瞬きするとなんだか見慣れた白い天井が見えた。


起きあがろうとすると頭が痛み、それを手で抑えながらどうにかゆっくりと上半身を起こす。


どうやらここは入院していたあの病院で、点滴などはしておらずただベッドに寝かされていたらしい。



「桐ヶ谷さん、目が覚めたって?」



おそらくお母さんが呼んだのだろう、二週間ぶりの東海林先生が優しく微笑んでいた。



「全く君は。退院したばかりでまた戻ってくるなんて」


「ははは……」


「すみません、私が気が動転してしまって」


「いやいやお母さん、ただの冗談です。気にしないで」



意地悪く笑った東海林先生は、私に向き直ると聴診器で診察をする。



「……うん。問題は無さそうだ。具合の悪いところは?」


「頭痛が、少し」


「鎮痛剤はいるかい?」


「そこまでじゃないので、大丈夫です」


「わかったよ。少し休んだら今日は帰っていいからね。次は健診の日に会いましょう」


「はい。ありがとうございます」



冗談混じりで笑った東海林先生と入れ替わるように入ってきた立花さんが、



「桐ヶ谷さん、お手数ですがお会計は受付で……」



とお母さんに事務的な話をしている。