「あのさ…お二人、俺の前でいちゃつきすぎなんだけど」

大賀さんにからかわれ、

「え、別にいちゃついてないよね?」

春樹にふると

「ああ。今はお前も一緒だし、全然いちゃついてないけど」

そう答えたのに

「いやいや、傍目にはいちゃついてるようにしか見えないってば。これがいちゃついてる内に入らないなら、普段は…想像もしたくないや」

大賀さんに突っ込まれ、思わず笑ってしまう。

今の構図は完全に、バカップルの私たちに挟まれた大賀さん、ということか。

だけど…私は10年もの間ずっと、大賀さんの幻にとらわれていたことは、春樹には決して言うまい、と決めている。

それはもう、とっくに過ぎ去ってしまったことでしかなく、しかも、大賀さんとの間には何もなかったのに、わざわざ過去を口に出すことは、誰にとっても、何のメリットもないだろう。

いつも、何でも春樹には打ち明けてきただけに、ひとつだけ秘密にしている、という点では、何処と無く後ろめたさもあるが、今の私は100%春樹だけ愛していることに、嘘など何一つない。

春樹も、自分の過去の恋について一切話したことがないし、どんなに愛し合っていても、敢えて話さないほうがいいこともあると思う。