恋も推しごと〜私の推しがふってきました〜



 同じ気持ちだと分かっていても、これを受け入れてしまっていいの?


 怜也くんは、もう一度会いに行くと宣言していたから、近いうちに私の家に来るつもりなのだろう。

 それまでに気持ちを決めなくてはいけない。


 私はぐちゃぐちゃの気持ちのまま、とりあえず帰ろうと会場をひとりで出た。

 比較的後の方に出たから、もう残っている人は少ない。


 まず由羽に相談する……それとも、全て終わってから話す……? うーん……っと悩みながら俯いて歩いていると、突然大きな影が私に覆いかぶさった。



「あっ、やばい……あぶないっ」



 身に覚えのある展開で、私は思わず固まってしまう。



「うそ……あぶなくないよ」



 そう言って、私を抱きしめた腕はキツく離さないと伝えてくる。

その閉じ込められた胸からは嗅いだことのある匂いと、少し汗の匂いも残っていた。


 きっと、ライブが終わって急いででてきたのだろう。帽子とマスクだけの軽装備だ。



「出会った時のこと思い出した?」