黒有栖……?
「…望先輩の彼女が…黒髪の有栖《ありす》で」
「…お前の髪も黒」
「…何より…黒髪はありすの憧れだからな…どうだ?」
月沢くん…私の為に……?
「いいんじゃねぇか…総長はどうする?」
「…総長は…氷雅、お前だ」
「はっ…最後まで…食えねぇ奴だ」
コツンッ。
ふたりは倒れたまま拳を突き合わせると瞼を閉じ、意識を失った。
その2つの拳は力を失い、地面へと滑り落ちていく。
「月沢くん! 氷雅お兄ちゃん!」
「ありす!」
夕日ちゃんの支えを払い、私はふたりに駆け寄る。
「月沢くん…?」
「氷雅お兄ちゃん…?」
まさか死――――。
私はその場で崩れ落ちるも、ふたりの体をさする。
ふたりは満ち足りた顔で両目を閉じているだけで何も発してはくれない。
違う。
違う、違う。
こんなの、悪夢だ。
悪夢に決まってる!