そして、7月16日の朝。氷雅(ひょうが)お兄ちゃんが迎えに来た。

 ガチャッ。
 月沢(つきさわ)くんが扉を開ける。
 制服姿の氷雅(ひょうが)お兄ちゃんが立っていた。

「…ありす、先に帰ってろ」
 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんが、ぶっきら棒な口調で言う。

「……うん」

 私は靴を履いて、外に出ると自分の部屋まで歩く。
 だけどふたりが心配で隣の開いた扉をそっと見守る。

 大丈夫……だよね?

「てめぇ、俺がいない間に一体どういうつもりだよ?」

「…俺んとこのナンバー2が勝手にやったことだ」

「あ? てめぇがありすに会いたくて仕組んだんだろうが」
 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんは月沢(つきさわ)くんの胸倉をグイッと掴む。

「てめぇがいる限り、ありすは(もてあそ)ばれ続ける」

「…だったらなんだよ?」

 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんは冷酷な顔をし、耳元で呟いた。