月沢くんは私をチラッと見る。
「…いえ、星野も一緒です」
『なら代わってくれるかな?』
「…分かりました。星野」
月沢くんが私の右耳にスマホを当てる。
『ありす、話すのは初めてだね』
なんて穏やかな声なんだろう。
「は、はい」
『そんな緊張しないで』
『君に伝えたいことがあるんだ。黙って聞いててくれるかな?』
「はい」
『暴走族有栖はね、俺の彼女の名前からそのまま取ってつけたんだよ』
え、彼女!?
『漢字で有栖と書くのも珍しくて、長い黒髪がとても綺麗だった』
黒髪の有栖……。
『他校の中学だったけれど下っ端の時からずっと支えてくれていてね、俺が独立した時も一番に喜んでくれた』
『ずっと共にいられると信じて疑わなかった』
『でもその甘さのせいで、翼輝との闘争の日、有栖は俺を庇って死んだ』
え……死んだ?
月沢くんは切なげな表情をする。
『だから君を見た時、彼女が生き返ったようで嬉しかった』



