「はぁっ、はぁっ」
 私は右肩に鞄をかけたまま裏道を走っていた。

「…星野(ほしの)!」

 え、月沢(つきさわ)くんがバイクで隣走ってる!?

「…話がある。止まれ」
「… 星野(ほしの)受け取れ」

 ふわっ。
 月沢(つきさわ)くんはウィッグを投げる。

 私はウィッグを受け取って被った。

 あ、駅だ。

 私は無視して駅の階段を駆け下りていく。

「…星野(ほしの)!」

 え、後ろから月沢(つきさわ)くんが走って駆け下りて来て…。

 あ、電車止まった。
 早く電車に乗らなきゃ。

 電車の扉が開き、学生やサラリーマン達が出てくる。

 私は電車に乗る。

「…星野(ほしの)!」
 月沢(つきさわ)くんは右手を伸ばす。