「ありす!」
 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんが私を右腕で抱き止める。

「危ねぇな」
「靴、ちゃんと履けよ」
 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんは、ぶっきら棒な口調で言う。

「うん、ごめんなさ…」

「お前、シャンプー変えた?」
 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんが真剣な眼差しで尋ねてきた。

 私はドキッとする。

「あ…うん…」
「今まではフルーティーな香りだったけど」
「夏だし爽やかな香りの方がいいかなって…」

 え……氷雅(ひょうが)お兄ちゃん怒ってる?

「そーかよ」
「遅刻する。行くぞ」

「あ、うん」

 私は黒のふわロングのウィッグに触れる。

 シャンプー変えたのマズかったかも……。