僕の記憶にないこともそうだが、僕の父や母という人が記憶や思い出に関する記録を捨ててしまったらしいのだ。

 僕は一時期完全な記憶喪失状態だったため、記録を抹消した両親を偽物じゃないかと思ったほどだ。

 物理的にも、僕には思い出がないのだ。

 おかしな人生だと思う。けれどこれが残念ながら僕の現実なのだ。未だに両親という存在にすら、実感を抱けない。──欠落者とでも言えようか。