学校を出て、電車に乗っても同じだ。
学校帰りの学生があふれる車内は、知らない顔のほうがずっと多い。
けれど、誰かに後ろ指を差されている気がして、つい俯いてしまう。
最寄駅に着いて、わたしは息苦しい車内からようやく解放された心地になる。
改札を出て自転車置き場に向かう途中、どこからか、鈴の音が聞こえた。
ーーシオ……?
はっと振り返ると、植え込みを猫が横切って行くところだった。
短い毛並みの三毛猫だ。首輪をしている。
どこかの家の飼い猫だろうか。
白い毛並みのシオとは、似ても似つかない。
わたしは肩を落とすのと同時に、一瞬でも期待してしまった自分が馬鹿みたいに思えた。
ーーシオがこんなところにいるはずがないのに。
わかっているのに、わたしのぽっかり穴の空いた心が、どこにいてもシオの姿を探してしまうんだ。

