たとえ9回生まれ変わっても



「お待たせしました。あんぱんひとつ、クリームパンひとつ……」

おばさんも、突然の男の子の登場に驚いているらしく、口を開けてぽかんとしている。

この人が黙っているところを、初めて見たかもしれない。

「お会計、2100円です」

「あなた、初めて見るけど、アルバイトの子かしら?」

我に返ったおばさんが尋ねた。

「はい。今日からここで働くことになった、紫央といいます。よろしくお願いします」

「あらそうなの! かわいいわねえー! 蒼乃ちゃんと兄妹みたいねえ!」

「はい、よく言われます!」

……ええ?
よく言われます?
いま初めて会ったんですけど?
あ、いまのはかわいいっていうのに対して?

戸惑いながらも、わたしはその男の子から目が離せなかった。

“紫央”ーー。
シオと同じ名前だ。
それに、目の色も。

おばさんはひとしきり男の子を質問攻めにしてから、じゃあねー、とご機嫌で帰っていった。