たとえ9回生まれ変わっても



「これお願いねっ!」

どん、と山盛りのパンをカウンターに乗せてもまだ、おばさんのおしゃべりは続く。

「ええっと……」

お母さんどこ行っちゃったの!?

いくら急いでるからって、レジの説明もなしで丸投げなんて乱暴にもほどがあるでしょ。

お母さんを呼びに行こうと、おばさんに声をかけようとするけれど、わたしの頼りない声は、おばさんの大声でかき消されてしまう。


そのときだった。

「いらっしゃいませ」

厨房のほうから、人があらわれた。
お母さんでも、お父さんでもない。
知らない男の子だ。

もしかして“もう1人”……?
でも、想像していたよりずっと若い。
わたしと同じくらいの歳に見える。

呆気にとられるわたしに、男の子はにっこりと笑いかけた。

その澄んだ瞳に、わたしは目を奪われた。


とてもきれいなーー青い瞳だったから。