たとえ9回生まれ変わっても



お母さんが困り果てた様子で説明した。

「お父さんがギックリ腰になっちゃって、動けないのよ。だからお願い。蒼乃、かわりに店番してちょうだい」

「ええっ」

わたしはびっくりして声をあげた。

あの健康の塊みたいなお父さんが?
一日立ちっぱなしで働いたあとジョギングに行くくらい元気なお父さんが、ギックリ腰?

というか店番って、そんな急に言われても……。

「とにかく、これ着ておりてきて。あ、それと、もう1人いるから」

「う、うん……え?」

ーーもう1人?

「とにかく、忙しいから早くしてね!」

お母さんは念を押して、また階段をばたばたと下りていった。

……お母さん。
もう1人って誰?
その説明はなし?

うちのお店は、お母さんとお父さん2人だけだ。
最近とくに忙しくて2人じゃ追いつかないと言っていたから、アルバイトでも雇ったのだろうか。