「それにしても、本当に舐めてるのかな?身内に極道がいるのに、実家はヤクザだ〜って俺に言ってくるってバカなのかな?」
クスクスと笑うと、もう興味無いのか、玲臣は煙草を吸い終わり帰ろうとする。
「待ってよ〜」
と、その後を追う。
俺とは正反対で、物静かなそいつは「お前さァ…」と、路地裏から出て、今までの争いが無かったかのようにどうでもいい風に歩き出す。
「結構な、二重人格だよな」
「そうかな?」
「…」
「俺は真面目な優等生だよ」
笑ってそういえば、鼻で笑った玲臣が「嘘つけどこが」と、俺の方を見た。
「本当だよ、ちゃんと付き合って2年の彼女もいるし。…ああ、でも、最近うざい虫がいるんだよなぁ」
「虫?」
「そう、そろそろ片付けようと思うんだけど、虫が、彼女の友達と付き合ってるから。彼女の友達が泣いたら美緒が悲しむ…」
「なんだそりゃ、さっきまで歯全部抜くって言ってた男のセリフじゃねーわ」
今度は面白そうに笑った玲臣…。
父さんの友人経由で知り合った玲臣とは、友達ってよりも、1番そばにいて相性が良かった。
「俺は父親に似て、女の子には優しいから」
「あっそ」
「ねぇ、玲臣」
「んあ?」
「手伝ってくれる?」
「なんで俺が」
「いーじゃん、俺らの仲」
「誰と誰の仲?」
「性格悪いなぁ」
「お前に言われたくねぇわ、二重人格」
「ん〜、だったらさ?」
俺の言葉に、意味深な笑みを浮かべた玲臣は、「いいのか?」と嬉しそうにする。
「大丈夫だよ、だって俺は真面目な優等生だから」



