疲れ果てていた。
私はもう限界だった。
心も身体もくたくただ。
私は今、自宅アパートの狭いトイレの中に独り。床にはスマホとたばこと灰皿そしてライター、チョコレートの袋を置いた、私は床にベッタリ座りトイレの蓋を閉めて蓋の上でお気に入りのふわふわのサーモンピンクのクッションを抱く。
足元には買ったばかりの新しい可愛らしい花柄の七輪、中には練炭もしっかり入っている。
練炭はひと月前、ネットで注文していてなかなか届かずにまだかまだかとイライラしていて、ようやく届いたものだ。
自分でもこんなに早くとにかく早く人生を終わらせたいという気持ちがなんだか可笑しいと思う。終わらせたいというよりも終わらせなければならないという方が正しい気がする。私は生きていてはならない。今強くそう思う。でもこの気持ちは昔からあったものかもしれない。
私はライターを手に取り練炭に火を付けた。
トイレに入る前に睡眠薬もありったけの10錠全て飲んでいた。終わる準備は万端だ。
少しずつぼーっとしてきた頭でカラフルなチョコレートの袋の中から個包装の袋を取り出し、それを破って一粒の小さいチョコを口の中に入れる。甘いチョコレートをゆっくりと味わいながら目を閉じて、ふと思い出す。
ほんの15時間前、私は母と回転寿司にいた。母は食べ物の好き嫌いが激しく、特に肉全般が食べれない。そのため、母と外食する時は回転寿司に行くことが多かった。ここの回転寿司には良く母ときた。家からは少し離れているが、車移動だし、ショッピングモールの中にあり、買い物好きな母には便利な場所だ。
いつものように入口の重い扉を開き、中へ入る母に私も続く。明るく元気いっぱいの笑顔の若い女の店員に渡された番号と同じ番号のテーブル席へ向かい、先に母は奥の席に腰を下ろす。私も母と向かい合う座席に座った。母はすぐに注文用のタブレットの画面を見て操作を始める。「千奈は何にする?」と私の目を見てまた画面に目をやる。私は、「サーモン。」と小さな声で答えた。母はタブレットにサーモンと茶碗蒸しを押して注文ボタンをタップした。その隙に私は真横の回転しているレールの上の棚に置いてある茶碗を2つとり、缶に入った抹茶を2つにスプーン一杯ずつ入れお湯が出てくるサーバーにそれを押し付けた。そしてそれを母の方に置くと母はすぐに口をつけた。「熱っ。」と顔を顰めている。私は母に悟られないようなるべくいつも通り普通を心がけて接していたが頭の中では死ぬことばかり考えていた。思えばお母さんとは最後まで分かり合えなかった。今まで幾度となく話し合ってきた。私は今でも母親に愛されなかったと思っているし、日常的にお母さんに虐待されていたことは鮮明に残っている。今目の前にいる母親は虐待されていた時ほど怖くは思えないが、とても冷たい人間だと今でも思っている。