着替え終わって控室に戻ると、涼ちゃんはすでに荷物をまとめてパイプ椅子に座ってスマホを眺めていた。

扉を開けた一瞬だけ目が合った。

「お疲れ様」と控えめに話しかけると、「うん」とぶっきらぼうな返事だけが返される。


「あの、もしかして、待っててくれたの?」

「別に。俺もさっき戻ったところだから」

「そっか」


涼ちゃんの傍らに置いてある荷物を見ると、私の荷物がまとめられていて、この荷物を持てばすぐに出られる状態になっている。

控室の中は、私たちがこの部屋を最後に出たときよりも、すっきりと片付いていた。


「涼ちゃん」

「ん?」


涼ちゃんはスマホから顔を上げずに返事をした。


「あの、さっきはごめんね。仕事前なのに、あんな取り乱しちゃって」

「別にいいよ。気にしてないし。ほら、閉館時間になるから、早く出るぞ」


そう言いながら涼ちゃんはガタンと音を立てて立ち上がった。

私も、「あ、うん」と小さく返事をして、私の分の荷物まで持って扉に向かう涼ちゃんの後を追った。