そんなことを考えながら浴室に向かって、私は愕然とした。

うちのふろ場とは思えないほど、高級感あふれる匂いがした。

しかし私に用意されていたバスタオルは、いつものごわついたものだった。

浴室に入ると、その匂いはさらに濃くなる。

そこに充満する湯気や匂いには、涼ちゃんの空気がどことなく残っているような気がした。

その残り香を、手探りしている自分がいる。

湯気をそっと吸いこむと、鼻先があの時感じたいい匂いを探し始める。

両手で包み込んだ愛おしい頭の形を思い出す。

不意に繋がれた涼ちゃんの手の温かさを、私はお風呂の湯気の中で探したがった。

ひとつひとつの思い出に、急に恥ずかしが押し寄せてくる。

それを振り切るように頭をぶんぶんと振る。

気持ちを落ち着かせようと大きく深呼吸をしたら、湯気がのどに張り付いてむせこんだ。