今日から君の専属マネージャー


私たちが帰路に就いたのは夜の9時過ぎだった。

あの後、私の突然の自己紹介にぎょっとする大人たちの前で、涼ちゃんは落ち着いた声で改めて私が吉田さんの代理のマネージャーであることを説明し、今日私が遅刻して迷惑をかけたことを詫びた。

涼ちゃんが説明をしている間、私は周りの大人たちの数に圧倒されていた。

こんなにたくさんの人が、この小さなスタジオにいて、ここで働いていたことに驚いた。

何人もの大人たちが、私たち子どもに注目していた。

もちろん私は、大学を卒業したばかりの23、4の大人の女性として見られていたはずだけど。

こんなにたくさんの人を前に、私の遅刻が一体どれだけ多くの人に迷惑をかけたのかを改めて思い知った。

涼ちゃんがどれだけ多くの人に、どれだけの時間をかけて謝ってくれたのか。

そして今もなお、頭を下げ続けてくれることを、申し訳なく思った。

だから私も、涼ちゃんと同じように、頭を下げ続けた。

涼ちゃんのあとに続いて「申し訳ありませんでした」と言うことしかできなかったけど。

最後に「これからもよろしくお願いします」と言って、今日一番の深いお辞儀をしたとき、拍手が起こった。

なんだか不思議な光景だったけど、ほっと安心もした。

そしてその後は何事もなかったかのように作業が続いた。
涼ちゃんは最後までスタジオの片づけを手伝っていた。

マネージャーである私が何もしないわけにはいかないので、もちろん私も手伝う。

触ったことのない機材、聞いたことのない言葉、飛び交う専門用語。

話に体がついていくのが精いっぱいだった。

頭はすでに置いてかれていた。

一方の涼ちゃんは、もう一人前のように働いていた。

その姿に感心してしまった。

やっぱり同じ高校二年生とは思えなかった。