テストの問題用紙や解答用紙を後ろに回すときでさえ、私はドキドキしていた。
後ろなんて振り返れなかった。
硬い体を何とかねじって用紙を後ろに回すと、優しくすっと手から引き抜かれていく。
こんな状態でテストなんてまともに受けられるわけもなかった。
まあ、こんな状態でなくても私のテストの結果は期待できないのだけど。
問題とまともに向き合えないまま50分のテストは終わっていった。
テストの答案用紙は、後ろから前に回される。
すっと後ろから差し出された答案用紙を、私は慌てて受け取った。
自分の答案用紙を重ねようとしたとき、後ろから回されたのが問題用紙だということに気づいた。
__涼ちゃん、間違えてる。
仕方なく、ゆっくりと後ろを振り返る。
「あ、あの……これ、問題用紙ですけど」
「あれ? 間違えたかな」
「はい」と言って差し出された解答用紙を、私は受け取る。
その手を、涼ちゃんの手が優しく包み込んだ。
そして、その手にぎゅっと力を込めると、私の方に体を寄せてきた。
「今日、一緒に帰ろ」
耳にかかる吐息に、体中が一気に熱くなる。
手に持っていた解答用紙が、はらりと床に落ちた。
「落ちたよ」
私から体を離しながら落ちた答案用紙を拾い上げた涼ちゃんは、そう言いながらにっと笑った。
懐かしいその屈託のない笑顔から、私はばっと視線をそらした。


