あの夏から、季節はゆっくりゆっくりと過ぎていき、春がやってきた。 

私は、高校三年生になった。

涼ちゃんとはあれ以来、吉田さんとの約束通り連絡を取っていない。

涼ちゃんの連絡先も消している。

だけど私にとって、あの夏休みは忘れられない日々だ。

涼ちゃんと過ごした日々も、自分に芽生えた小さな想いも。

芸能界という、自分にとって今まで非日常、非現実だと思っていた世界に足を踏み入れ、テレビや雑誌の中だけの存在だと思っていた人たちと、ふれあった日々を。

あの日々は、私に確かな爪痕を残していった。