私の夏休みは、突然ぽっかりと穴が開いたように空しくなった。

あんなに忙しい日々を送っていたのに。

あんなに充実した夏休みは、今思えば初めてだった。

夏休みの課題はまだ残っている。

だけど、それに手を付ける気にはなれなかった。

もうこんな生活をして、何日が経っただろう。

今日もソファにごろんとして、見てもいないテレビをつけっぱなしにしていると、勝手口の方でコンコンと音がした。

キッチンにいたお母さんと、思わず目が合った。

たぶん、私たちは同じことを思った。


__涼ちゃんが、帰ってきた。


私は急いで勝手口の方に向かった。

どんなに数日怠け者でいたとしても、こういう時はとっさに体が動くのだから不思議だ。

お母さんと視線を合わせて、ゆっくりとドアを開けた。

その先にいた人の顔を認識した瞬間、お母さんは「きゃあっ」という悲鳴とともに、尻もちをついた。

「かっ、かっ、かっ……」と扉に立つ人を指さしながら後ずさりするお母さんの隣で、私はその人を目の前に、呆然と立っていた。


「……楓君」

「やっほ」


動揺する母と、冷静な娘に見つめられ、ピンク色の頭になった楓君は軽い調子で手を挙げた。

その後ろには、厳しい顔をした吉田さんが立っていた。