唯くん、大丈夫?

「…」





『…密会』






紫藤ユリアの言葉が頭から離れない。






えっと。



えっと、何を、言いに来たんだっけ。





『途中までされるがままにしてたじゃないですか。』





…されるがまま?

唯くん、拒否しなかったってこと?





「…優花」




あいも変わらず非の打ちどころのないイケメンの唯くんに、

また沸々と湧きあがる怒りと悲しみをなんとか押し込める。



…大人になれ。



大人になるんだ、羽根村優花。





「優花、俺は


「あはははー!!」




突然笑いだす私に何か言いかけた唯くんがビクッとする。


「はービックリした!唯くん、ほんっとモテるよねぇ。」



大丈夫。

ヘラヘラするのは、得意。



「お昼はごめんね唯くん!突然だったからビックリしちゃって、大きい声出しちゃって。今、謝りに来たところなんだ!」


唯くんは私の言わんとしていることを汲み取ろうと、じっと聞いている。


「あのね、私、全然平気だよ!気にしてない!口と口がくっついただけのことだし、少しスキンシップしたぐらいでいちいち怒ったりしないよ!」


「…」


唯くんが感情のない目で私を見下ろすのを、私はヘラヘラ笑って見上げる。


「だって私、唯くんの、彼女だし!」


そう。


私は学校一のモテ男である唯くんの、彼女。


こんなことぐらいで落ち込んだり怒ったり、しちゃいけない!