「…密会」
紫藤ユリアが吐息混じりのエロい声で言った。
「み?みみ、みっかい…?」
みっかいってなんだっけ?新手の下ネタ?
脳内でバグが起きて漢字変換できない私をよそに、
唯くんがいつも通り落ち着いた声音で弁明を始めた。
「…違う。こいつがいきなり襲撃してきたの。今追い出そうとしてたところ。」
唯くんが紫藤ユリアをベリッと引き剥がして廊下に放すと、「あーん」とこれまた色っぽい声を出す紫藤ユリア。
「そう言いながら途中までされるがままにしてたじゃないですか。実は満更でもなかったりして…?」
「え!?」
「…集中してたんだよ。勉強に。」
「その言い訳は苦しいんじゃないですか?唯先輩」
紫藤ユリアがクスクスと笑って、唯くんが睨む。
むくむくと強烈な不安とやるせなさみたいなものが湧き上がる。
「とにかくあんた、もう帰って。もう来ないで。」
「嫌です。また来ます。…それにあんたじゃないですよ。ユリア、です。待っててくださいね、唯先輩。」
紫藤ユリアは余裕な笑みを浮かべて、口を開けて見惚れる男子諸君の合間を颯爽と抜けて帰っていった。



