私はこういうみねくんの背中をほとんど見たことがなかった。

いつも私が見送られる側で、優しく笑いながら見えなくなるまでずっと手を振ってくれていた。




陽だまりみたいに暖かくて

私の全部を受け止めてくれた人




みねくん。

みねくん。

ごめん、だけじゃ済まないぐらいのことをしてしまった。

ありがとう、じゃ足りないくらいのものをたくさん貰ってしまった。







『何が何でも幸せになれよ。優花』



みねくんの最後の願いが胸に突き刺さって、もうどうにもならなくて

折り合いをつけようとしていた心がまたぐじゅぐじゅとかき回される。




私は満天じゃない星空に押し潰されそうになって、その場にしゃがみ込んだ。



幸せってなんだろう



どうして私なんかの幸せを願ってくれるんだろう



みねくんの無償の愛に応えられない最低な私の幸せなんて、どうでもいいから



これからみねくんがたくさん幸せになれますように



私の10倍、100倍、



みねくんに幸せが訪れますように









空には雲が伸びて数少ない星を隠す代わりに、目が痛くなるほどの眩しい、眩しい綺麗な月が

空からずっと遠いはずの冷たいアスファルトをキラキラと照らし出して

静かに、静かに

小さくなった私を、残酷なほど優しく包み込んでいた。