唯くん、大丈夫?

「…」








唯くんが腕の力を緩める。




そして名残惜しそうにも思えるゆっくりとした動作で私の腕をなぞって、その手を離した。










『ヴヴ…ヴヴ…ヴ…。』









スマホが振動するのをやめて、再び暗い部屋に静寂が訪れる。



そこでようやく暗闇に慣れた私の目が唯くんの表情をうつした。
















唯くんが、泣いてる















初めて見る唯くんの泣き顔に声を失くすと、それに気付いた唯くんがすぐに顔を背けた。



そしてそのまま立ち上がり、玄関に向かう。






私はただ、ベッドに座ったまま唯くんの輪郭を呆然と見送るしかできない。






これが、





この背中が本当に最後かもしれない。





それでも私は 





唯くんを引き留める術も、理由も、気力も

もう持ち合わせていなくて









キィ…と玄関の扉が軋む音を聞いて、唯くんの革靴が遠くなる音がする。








扉の閉まる音が部屋に鳴り響いて、








そして、

唯くんはいなくなった。