次の瞬間、唯くんが振り向いた。
「!」
ビクッとした私は左手を引っ込めるのを忘れてる。
唯くんが私の左手を見て、かたまった。
「…」
…し、しくじった!!
「ッすいません!なんでもないです!すみません!」
謝りながら自分のしようとしていたことに恥ずかしくなって、ぐんぐん顔が熱くなっていく。
どうしよう、唯くんがビックリしてる…!
やばい、なにか言い訳…、
「いいよ」
「へ」
唯くんが動揺する私の目をまっすぐ捉える。
「…触っていいよ」
「………え?」
今、唯くん、触っていいよって言った…?
「はい」と言って唯くんが私にもう一度背中を向ける。
「えっと……?」
唯くんは黙って私に背中を向けたまま、お酒を口に運んだ。
…そうだ。
酔ってるんだ。
わたしも、唯くんも。
少し背中を触るくらい、なんてことないよね。
「………失礼、します。」
わたしはもう一度、唯くんの背中にそっと左手を伸ばす。