すると、唯くんがまた首をグリンと反対方向に向けた。






「…」






「…」






…戻ってこない。






「唯くん…?」


「なに」


「どうしたの?」


「なにが」


「えっと…そっち向いちゃってるから…」


「…うん」


「…」




なんでかはわからないけど、とにかくあっちを向きたいんだね…?

それ以上何も聞ける雰囲気じゃなくて、わたしはお酒を口にしながら唯くんの背中を見つめた。




…あ。

今なら背中、見放題?

ラッキー!





唯くんが振り向かないのをいいことに、私は唯くんの背中をマジマジと観察し始めた。




前よりちょっと広くなったかな

相変わらず程よい筋肉が作る羽のラインが、かっこいいなぁ





唯くんの背中。

私の大好きな背中。





夏の夜、わたしを花火に連れていってくれた背中。

…あの日、遠くなっていった背中。











「…」











無性に触りたくなって、

そっと左手を伸ばした。