唯くんは私の肩を抱いたまま、人数の割に静かすぎる教室を出た。


振り返って見ると、教室に残された人たちはまだ事態を飲み込めずに唖然としてる。

あの、私もです。


当の本人は「さて、勉強勉強」と何事もなかったかのようにスタスタと歩いてる。


騒然としていた廊下の人だかりは、まるで王様が通るみたいに道をザァーっとあけてくれる。




唯くん。

おバカな羽根村にもわかるようにこの状況を説明してくれませんか?

急展開すぎて全然ついていけてないのですが?

というか唯くんの手とか腕とか胸とかくっついてるところを意識しちゃって唯くんの匂いくんかくんかハァハァしちゃうんですけど私って変態ですか?
変態ですよね!すみません!



「唯!」



私の鼻息がフガフガし始めた時、美琴が後ろから走ってきた。


あぁ!助かった!
美琴ちゃんからもこの二重人格くんになんとか言ってやってください!


「もし今後ぶっ殺したい人に強い相手がいたら手伝うね!」

美琴がグッと拳を作って超真顔で言った。


…いや、そこ?

ていうかあなた空手で全中制覇したことある方ですよね?本当に殺す気?


「勿論それありきで言ってる」

唯くんがこれまた超真顔で頷いてる。


なんなの?

このポーカーフェイス達なんなの?