「ゆ……いく……」
『苦しい』
唯くんの顔にそう書いてあるみたいだった
「…帰る」
その時
私と唯くんを繋ぐ何かが、ブツッと音を立てて切れた気がした。
唯くんが私たちに背中を向ける。
「唯くん…?」
唯くんは私の問いかけに応えることはなく、そこに落ちていた傘を拾って歩き始める。
「…っ、唯くん」
雨に降られるまま、駅の方に足を進めていく。
「唯くん、唯くん…!」
傘を引きずって、歩いていく。
「……っ」
遠くなっていく
私の大好きな背中が
ずっと追い続けてきたその背中が
「…唯くん!!!!」
私は悲鳴にも似た声で叫んで、足を踏み出した。