「…ッみね君!!」


私が大声で呼ぶと、橋の柵に腕を置いて呆然と雨に打たれるみね君がゆっくりと顔をあげた。



「……ハッ。嘘だろ……?」


力なく笑ったみね君の目には、いつもみたいな輝きはない。


「ハァ、ハァ、…っ風邪、ひいちゃうよみね君!」


私は息を整えながら近づいて、傘をみねくんの頭上に傾けてからタオルを差し出す。



「……いい」


「ダメだよ、風邪ひいたら辛いよ…!」


「今は……ちょっと、泣きたい気分。」



そう呟くみね君の長いまつ毛から、

ポタポタと雫が落ちていく。








「…」








「…」







「…」






「…なぁ」






「…」






「…だから、なんで優花が泣くんだよ…」






「……グスッ。…お、おかい、おかまいなく…っ」


「かまうに決まってんだろーが…」



雨と涙でビショビショに濡れたみね君が、切ない笑顔を私に向ける。



そうだよ、今泣きたいのはみね君なんだから、私が泣いちゃいけない。

勝手にみね君と自分を重ねて泣くなんて、失礼にも程がある。


私がなんとか冷静になろうと震えながら深呼吸を繰り返すのを、みね君は虚ろな目でじ…と見ていた。


そして、











「…………ごめん」












私の返事を待たずに、




みね君は両腕を私の背中にまわした。