事件の前、

唯くんは外を逃げ回っていてたまたま渡り廊下を行く私を見かけたらしい。



見知らぬおじさんといるのが気になって中庭側から特別教室棟の方に行ったとき、
図書室の電気がついてすぐ消えたのを見て気づいてくれたそうだ。



…だからって普通、窓ガラス割って入ろうと思う?

かっこよすぎか、私の彼氏。

今、目の前でちゃんと座って一生懸命書き書きしてる人と同一人物とは思えない。




私は唯くんの左手の包帯に目を向ける。


うぅ…痛々しい。


唯くんは全然痛くないって言ってたけど、10針も縫う大怪我。

痛くないわけない。





…唯くん、ごめんね。





口に出すと逆に気を遣わせちゃいそうで、

私は心の中で唯くんの左手に話しかける。

そんな心の声などつゆ知らず、

唯くんはせっせと文字を書き連ねてその一枚を書き終えた。



「ええと…あと2枚…400字だね!あと少し…でもないかーあはは」