言葉を絞り出そうと頑張る仲山くんから唯くんに目を戻すと、バチッと目が合った。




…あ

ちょっと不機嫌な顔

なんか怒ってる?




私がなにもできずにただ見返してると、唯くんはまた女の子に話しかけられて視線を戻した。





「…なぁ。あの顔やばくね?あれって九条の愛想笑い?」

「うーん、多分…?」

「わからんのかい」

「だって初めて見るもん、あんな顔」



唯くんは死んだ目で口角を無理やり引き上げて笑っている。

笑っていると言っていいのか迷うぐらい引き攣ってる。



「九条も必死だな…仁平のせいで」









…それは、遡ること2週間前。








「去年の文化祭のこと、覚えてるよな?」





生徒指導の仁平先生に突然呼び出された唯くん。

心配で、職員室の外からこっそり様子を伺う私、仲山君、委員長。

私たちは、先生の問いに対していきなり「は?」を繰り出す唯君をヒヤヒヤしながら見守ってる。



椅子にふんぞり返って座る仁平先生のこめかみにミシッと青筋が立った。



「…お前に来たクレームの件だ。他校の女子生徒にひどい対応したらしいじゃねぇか。」



仁平先生は苛立ちをペンに込めて、威圧的にトントン机を叩いてる。



唯くんへのクレーム…


確か他校の女子生徒が唯くんに触って、唯くんが「触んな」ってあしらったという話。



「あー」

唯くんが頭をぽりぽりかいた。


「ほう…その様子だとまるで反省してなさそうだな」


仁平先生が立ち上がって唯くんを睨む。