マンションの10階、日当たりのいい2LDK。

白を基調とした部屋には、歩くんのものであろうベース、2人がけの高そうな革のソファにガラスのローテーブル。

大学生の一人暮らしにしてはえらい豪勢だな、とは思ってた。



「…歩くんの家じゃないの?」

「違うよ。住んでるけど。あれ?言ってなかったっけ?

「…」



たまに俺はこの人のいい加減さに閉口する。



「家主って、女…?」

「うん」



俺はため息をついた。


何も知らずに女の人の家に上がり込んでたわけか、俺…




前から家の隅々で女の気配を感じていた。

化粧品や雑貨のセンスや、匂いから。

深く考えずに過ごしてきたけど、家主となれば話は変わってくる。




「…彼女?」

「んーん」

「じゃあ、親戚?」

「ちがう。飼い主」

「は?」


目を丸くする俺をまるっきり無視して、歩くんはまた電子タバコを口に咥える。


「かい……?なんの?」

「俺の」

「…」






歩くん


女の人に飼われてんの?






衝撃事実に困惑する俺の視線など気にならないらしい歩くんが、また大人っぽい横顔で甘い煙を吐いた。






「…へぇ…」




俺は考えるのをやめた。