「…」




全身が心臓になったみたいにバックンバックンと脈打って机から動けない私をよそに、みんながザワザワとお昼休みモードに切り替える。





バックンバックンバックンバックン…







「ッツァーーーーーー!!ダメだ!!」





じっとしてるのは性に合わない!!



私はガタン!と立ち上がった。



また羽根村がなんか言ってるなとみんなが無視する中、美琴と目が合う。

子供が苦手なお野菜を食べたときの母みたいな目だ。




「…行ってくる!」

「行ってらっしゃい。」




私は心臓の音と同じぐらいのスピードで教室の後ろ扉を目指して歩く。










会いたい




唯くんに




はやく会いたい






私は扉を開けて廊下に飛び出して、










「ドゥフ!」










…ぶつかった。







「…!」







見上げなくても、わかる。



学ランの下の少しクタッとしたベージュカーデと

ふわっと香る爽やかな柔軟剤の香りと混ざったその人の匂い






私はゆっくりと顔を上げた。