「…みこ様。もうちょっと芸能人らしいサインお持ちでないんですか?」
紫藤ユリアの生徒手帳に達筆で『柊美琴』と書き込むみこ様をニヤニヤしながらいじると、横にいる紫藤ユリアに頭をひっぱたかれた。
「痛い!」
「あ…すみません。害虫見ると叩きたくなっちゃうんです。」
「害虫?今、害虫と言った?仮にも先輩に害虫と言った??」
私たちは街中で腰がくだけて動けなくなった紫藤ユリアを連れて、ひとまずファミレスに入った。
美琴の隣に座ろうとしたら借金取りのやくざ然とした紫藤ユリアに脅され、なぜか隣に座らされている。
さきほど真っ赤な顔でぷるぷる震えながら「サ、ササササササインくださ…!」と美琴に生徒手帳を差し出した紫藤ユリアは、
今はチラチラ美琴を見て、キャッと顔を覆う、というのを繰り返している。
どうやら、というか、確実に美琴の……いや、みこ様のファンだ。
私に容赦ないところは相変わらずだけど…唯くんに自信満々でアピールしていた紫藤ユリアとは思えない。