魔女の本はほとんどの本が色んな魔女がメモとして書いた物が多く、呪いの事だけがまとまって書かれている本なんてない。


俺が借りている魔法薬の本は魔女の本の中でも珍しく、未来の魔女の為に製本された物であそこまでよくまとまっている本はなかなかなかった。


かなりの量の本から探し出すのは簡単ではなく、あっという間に辺りは暗くなっていた。



「はぁ…見つからねぇ!一旦休憩して明日また探さね?」

「慶次は休憩していいよ。明日になると楓ちゃんがいなくなる確率上がるから俺は徹夜してでも絶対探すから」

「……そもそもここに南條に掛かってる呪いの事書いてあるかどうかも分からないだろ」

「絶対あるよ」

「何で言いきれるんだよ?」

「真穂のおばあちゃんは完璧な魔女だったから。帰って来ない理由はわからないけど、ここに残してある物は真穂が300年生きる事になっても困らないように…真穂のおばあちゃんの知識が全部置かれているんだと思う。魔女について分からない事はこういう残された本から調べて身に付けるんだって楓ちゃんも言ってたし」

「そっか……そういえば、おばあちゃんここにある本いつでも見ていいって何回も言ってたなぁ」

「……ちょっと休憩したら再開するかな…っつーか、探し始めてから何も食べてないよな?何か食べ物持ってくる」


慶次はそう言って立ち上がると、本棚にガンっとぶつかった。


「痛っ!!」

「慶ちゃん大丈夫!?」


ガサッ


慶次がぶつかった拍子に本棚から古そうな紙の束が落ちた。


「何だこれ……?」

「ん?魔法薬のレシピかな?日本語で書いてあるね?明治?」

「明治だと150年くらい前か?」

「ん?……そうだ!日本語で書かれてる本から調べれば良かった!何で思い付かなかったんだろ!ちょっとそれ見せて!」


慶次からかなり紙の束を受け取って慎重に開いた。


「何か手掛かりになる事あるの?」

「楓ちゃんの成績覚えてる?」

「ほとんど赤点だったやつな?」

「楓ちゃん、英語8点だったんだよ。8点だよ?魔女の本って今調べてたからわかると思うけど7割は外国語でほとんど英語表記。これ200年以上読んでて英語8点ってありえないと思うんだ」

「確かに!今わからない英語は調べてたけど繰り返してたら英語覚える気がする!」

「つまり、南條は日本語で表記された魔女の本しか読んでないのか……230年生きてるって事は南條生まれたの江戸時代か…」

「楓ちゃんの生きてる中の100年は日本鎖国してるし、英語に対して苦手意識あるんじゃない?」

「改めて楓ちゃんの歴史考えるとすごいね…」

「歴史勉強してると、江戸時代昔の人って知的で真面目なイメージあるのに一気にイメージ崩れるな……」

「歴史で習う事は戦とか真剣な場や辛い時代の部分だけ切り取ってるからね、案外今の人達と変わらないと思うよ。有名な歴史上の人物のプライベートな手紙のやり取りでふざけ合ってる手紙もあったりするみたいだし」



ついでに俺がよく見てる製本された魔法薬の本も楓ちゃんも同じ物を持っていて、日本語版になっていた。


「今日調べて思ったんだけど、魔法薬のレシピや呪いの傾向が料理みたいに国ごとに似てるんだ。日本は小さい国だし魔女の数も他の国に比べて少ないはずだから日本で受け継がれてるレシピは同じ物の可能性が高い…」



日本語の物は昔の物になると今と言葉が違うので、英語よりも解読が難しい。


先程の紙を捲るとやたらと絵が多くて、これは何とか解読出来そうだった。
すると筆で目の絵が書かれているメモを見つけた。瞳の部分が紫色をしている。



「真穂、楓ちゃんの瞳の色ってこんな色だった?」

「ん?……んー?こんなに濃くないかな?もっと薄くて綺麗なの」

「うーん……今みたいに色んな色の絵の具ない時代だからなぁ、紫の表現がこれが限界だったのか?」

わかる漢字や単語を見ると、魔法薬の効果は人体入れ替わり?人間の中身が入れ替わるって事だろうか…。


そんな事まで出来るんだ。
作った者の代償の呪いが…100年……視力……無…?


100年間失明するって事か?
100年……何か引っ掛かるな。