「ねぇ…那柚ちゃん」

「ん?どうしたの?」

私よりずっと背の高い男の子が、私の名前を透き通った声で、ささやく。

「大人になったら、僕と結婚してくれる?」

突然のことで驚いてしまう。

「どうして私と結婚したいの?」

「那柚が大好きだからだよ」

「でも私は…」

何かを言いかけたところで、彼の姿が見えなくなる。

「あ…」

私の髪の毛を乱す風が吹く。

ーーーーーーーー
ーーー

「……ゆ」

「んん…」

何?騒がしい…

「那柚、いつまで寝てるの。さっさと起きなさい。休みだからって、寝すぎよ。」

重たい瞼をこすりながら目を開けると、お母さんの姿が、目の前に移る。

「んん…今何時?」

「もう10時よ。昨日夜更かしでもしたの?」

「え……10時⁉やばい…っ!!」

ほんとにやばいっ!!今日友達と11時に遊ぶ約束してたのにっ!

ベットから起き上がり、超速で準備をする。

昨日はいつも通り11時には寝てたのにぃ~!!

「お母さんごめん、そこのヘアピンとってー!」