「男女別で記録測るから名前順で並べー。んで安堂と有明は記録頼んだ」



先生に名前を呼ばれて表がはさまったバインダーを受け取りに行く。



アリアケという名字のせいで名前順は人生ずっと、前から2番以内。


今年は運悪く1番前で、先生によくこき使われる立場。

出席番号なんて選べるもんじゃないのに、ひどいもんだ。




「ったくいつもア行ばっか雑用に使いやがって、ひでえ話だよな」


「今同じこと考えてた。ワタナベとかがよかったなぁ、苗字。」



隣で先生への悪態をつきながらペン回しをする男子。



安堂 翔琉(アンドウ カケル)。彼もまた運の悪いア行の仲間。


出席番号2番だから私よりはマシだろうけど、男子の中では1番だしよく一緒に雑用をさせられるんだ。



「俺“ン”から始まる苗字がいいな」


「ないでしょそんなの」


「ン堂翔琉でいいよ、もはや」


「はいはい、ちゃんと記録してねン堂くん」




新学期はだいたい名前順の席から始まるから、安堂くんとは4月からの仲だ。


別に普段からよく話すってわけでもないけど、この間の席替えで隣の席になってから話す回数はまた増えた。




小さい頃からサッカーをやってる彼は少し焼けた肌がよく似合う元気な少年である。


クラスでもムードメーカー的立ち位置で女子とも仲いいし、男女ともに人の扱いがうまい。


近づきにくいと言われやすい私に初対面で1発ギャグを仕掛けてきたかなりの変人だ。