「咲結」

「別れよう、遥輝。今までずっとごめん」



必死に上げた口角、作り笑いに見えてないといいな。



たしかに浮気したのは遥輝だし、本来許されるべきものではない。


でも、私も遥輝を傷つけていたと考えるとお互い様だから。




いつも喧嘩ばっかで、目すらまともに合わなかったからこそ、最後くらい笑顔で伝えたかった。



最後くらい、いい彼女で終わらせたかった。




「……ごめん、咲結。最低だってわかってる。恨まれたって仕方ないと思う。


……今までありがとう」



遥輝は深く深く頭を下げた。



そして私は「委員の仕事があるからもう行くね」と背を向けた。




もう、限界だったんだ。



「…っ、ぅ」



今、遥輝が何を考えてるかなんて知らない。



どんな顔をしてるのかだって、わからない。



ただ、別れを伝えられてすっきりした気持ちと、今までの思い出がフラッシュバックして、涙が溢れて止まらなかった。




こうして、私と遥輝は別れた。