「出さなきゃ負けよ!最初はグー!じゃんけんっ」
「えっ、ちょっ!」
「ぽい!」
咄嗟に出した私の手はグー。
対する夏木先輩。
パー。
有明咲結、16歳。
夏木先輩ファンに刺されるまでそう遠くなさそうです。
「はい俺のかちぃ〜」
「不意打ちずるいです!!」
「いやいや、ちゃんと反応できてたじゃん?」
なんて意地悪な笑みを浮かべる夏木先輩はさながら悪魔だ。
大魔王ナツキングだ。
「はいそんな顔しな〜い!決定事項だけど、なにか意見ある?咲結チャン」
完全敗北。
出してしまった以上、負けてしまった以上、もう何も言い返せない。
おのれ大魔王…!明日腹痛にでもなってしまえ。
「……龍臣センパイ」
「よく出来ました〜!強いて言うならもっと笑顔で、大きくて高い声で呼んで欲しいなぁ」
「怒りますよ?」
「ごめんごめん」
そうだ、2人の時だけ呼べばいいんだよ。
そうすれば誰にも文句言われないし、目もつけられない。(多分)



